全国教育系ワークショップフォーラム
←Home

メールマガジン:

NEW!04/08/16 ゲストインタビュー・その1 橋本久仁彦さん

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      全国教育系ワークショップフォーラム
      メールマガジン vol.20 '04/08/16(月)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  今回の内容:
   ● ゲストインタビュー・その1 橋本久仁彦さん
   ● レポートボランティア募集中(8/31〆切)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
サイトでメールアドレスを登録してくださった方々へ送付しています


第3回全国教育系ワークショップフォーラム。
今年のプログラムやゲスト情報を、ウェブサイトで公開しています。
http://www.skunkworks.jp/akagi/

参加申込み受付は、9/1(水)から。
ウェブサイト(ないしファクス)で受け付けます。
今年は最終回。
参加をご検討中のみなさん、手ぐすねひいてお待ちください。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

◆◆ 橋本久仁彦(はしもと くにひこ)さんインタビュー ◆◆
 
今年のゲスト・インタビュー。第一弾は、橋本久仁彦さんです。
高校教師や、大学でのカウンセラーを経て、現在はプレイバックシア
タープロデュースの代表。

この五月に最終回をむかえた、伊勢達郎・中野民夫らとの「ザ・ファ
シリテーションセミナー」(淡路島)や、上勝町で毎年開催されてい
るフリーキャンプなどを通じてご存知の方もいるかもしれません。
 
橋本さんの詳しいプロフィールはこちら↓
http://www.skunkworks.jp/akagi/guests3/#hashimoto

 - - - - - - - - - - - - - - - - - -

●プレイバックシアターとは

──いまのお仕事は?

橋本:プレイバックシアタープロデュースという看板をかかげて、ワ
ークショップをしたり、大学で教えたりしています。
個人カウンセリングや、カウンセラートレーニング、ファシリテータ
ートレーニ ングも手がけています。

──「プレイバックシアター」とはなんでしょう?

橋本:即興の演劇です。「プレイバック」という言葉のとおり、脚本
は一切なしで、テラー(話し手)が語った話を、その場で即興で演じ
るんです。ワークショップでは、参加者がテラーにも演じる側にもな
ります。

自分の個人的な出来事を、なにか語る。そしてそれが、目前で他人に
演じられる。
この過程を通じて、テラーは自分の心や気持ちの有り様から、少し距
離をとり、自己認識を深めることが出来る。また、自分が生きたいビ
ジョンにエネルギーを与え、その実現が促進されます。

──即興演劇というとロールプレイングが思い浮かびますが、それと
は違いますか?

橋本:違うと思いますね。プレイバックの特徴は、演ずるための情報
量が極めて少なく、アクターの即興性や創造性が存分に発揮される点
にあります。
また、とても治癒的な方法だけど、治療を目的にはしない。テラーの
物語の中心にある感情や存在に触れる表現を目指し、ディティールの
正確さには、それほどとらわれないんです。


●誠実さや一生懸命さの方が効く

橋本:そもそも僕が、どうプレイバックシアターに出会ったかを、話
してみましょうか。

オーストラリアで大きな会合があると友人に誘われて、冷やかし半分
に行ってみたんです。
僕は会場で誰彼かまわず抱きついていたから、ハグボーイってあだ名
を付けられていたんだけど、ある分科会で「ハグボーイ、舞台に上が
ってアクティングしろよ(演じてみろよ)」って言われてね。まあ、
右も 左もわからないけどなんとかなるだろうと、他のアクターにま
じって上がってみたんです。

その時のテラーは、ヒゲっ面の大柄なメキシコ人。彼が自分の物語を
語り始めました。
けど、なにを話しているんだか、わからない。そもそも英語はあまり
得意ではなくて。でも「チャーチ」とか「ジーザス」といった単語が
よく出てくるから、キリスト教に関する話なんだろうと思いながら聞
いていました。

で、話しが終わって。テラーの横のコンダクター(ファシリテーター
に相当する存在)が「主役は誰にお願いしますか?」とそのメキシコ
人に聞いたら、「ハグボーイ」って僕を指さすんですよ。もう、エー
ッ!って。どうせいっちゅうの。
でもプレイバックでは、舞台上のアクター同士は相談しない。そのま
ま即興で始めるんです。だからどうすることも出来ないまま、すぐに
音楽が始まった。

──音楽も即興ですか?

橋本:ええ、ミュージシャンと呼ばれる役があって、様々な楽器を演
奏してアクティングに参加します。

主役に選ばれた。だけど、話がわからないので、他のアクターがどう
するかをみて推測するしかない。
そしたらね、彼らが身体や椅子で教会をつくりはじめた。

そのまわりを回って眺めてみましたよ。アーチをくぐって中に入って
みたら、キリスト像が正面に立っている。
それがグググーッと僕の方に迫ってきた。どーすればいいんだろう!
と思いながら、僕もそのまま一緒に後にバーンと倒れてしまって。そ
のまま床に横たわってしまった。僕はこれでおしまいにしてくれーっ
て、祈る気持ちでした。

....そしたらそのうちに、音楽のリズムがだんだん上がってきてね。
調子がいい感じになってきて、教会だったアクターやキリスト像もみ
んな立ち上がって踊り始めた。
僕も「そうか踊るんかー」と立ち上がって、踊ってね。リズムがもっ
ともっと上がってきて、ダーッと盛り上がって。盛り上がりきっ た
ところでバッ!と止まってね。
僕は思わず両手を上げて、「バンザーイ!」って叫んでしまった。

そしたらそのメキシコ人が、大泣きしながら抱きついてきたんです。
僕は、なんだかわけのわからないままで、なにがどう良かったんだろ
うって(笑)。
後から他の人に聞いてみたらね、彼の話は、はじめてキリスト教に出
会って、宗教改心した時の出来事だったそうです。

──偶然というか....、よかったですね。

橋本:プレイバックでは、こうした「偶然」が非常によく起こります
。このような、深い意味のある偶然性には、本来の芸術や演劇が持っ
ていた、重要な機能につながるものがある気がします。


●人の話に批判なく耳を傾け、
 集団の中で自発的に行動し、心を大きく開くこと

──ディティールより即興性が大事、とおっしゃいましたね。

橋本:ええ。プレイバックのアクターは、どんなにうまくやろうとし
ても、俺はうまいぞと強い自信を持ったり、結果を誇ったりできない
。そういう構造なんです。
本質的に、アクターの演技力よりも、演技から見えてくるその人の誠
実さや一生懸命さの方が、要素として効く。

──治療が目的ではない、とお話しでしたね。じゃあプレイバックシ
アターの目的はなんですか?

橋本:創始者のジョナサン・フォックスは、「批判なく人の話に耳を
傾けることができ、集団の中で自発的に行動し、心を大きく開けるよ
うになること」と言っています。
これらの態度は、プレイバックコミュニティの中ではごく当たり前に
実現します。

オーストラリアの体験では、「これが演劇のパワー なのか」と思い
ました。メキシコ人の話は彼の個人的な体験談ですが、“普遍的なも
のとの出会いを通じ、人生が転換する”という、元型的な構造を持っ
ています。だから、会場にいた他のみんなも自分に引き寄せて感じ入
っている。

ジョナサン・フォッグスは、ネパールの山村で、演劇の源流というか
、その根元的な力や役割に気づく機会があったようです。そしてアメ
リカに戻ってから、近所のふつうの人々の話を聞いて、その場で即興
演劇を行うことをはじめました。

すると場に、参加者の深いエモーション(感情)が溢れ出てくる。そ
の扱い方を学び足して、現在のプレイバックシアターに至っているん
です。
アメリカでは活躍しているんですよ。あの国は山火事が多くてね。フ
ァイヤーカンパニーと呼ばれるプレイバックの劇団もあって、全国の
被災地をまわっては、住人達の体験談を演じ、癒しをもたらしている
そうです。

●大学でのカウンセラーの仕事をやめる

──オーストラリアの後、今日にいたる経緯は?

橋本:オーストラリアへ行った頃の僕は、大学で学生相手のカウンセ
ラーをやっていました。その仕事に役立つ要素があると思ったので、
プレイバックのトレーニングプログラムにときどき参加するようにな
った。
そんなある日、ニューヨークから来ていたジョナサンが、日本の指導
者が欲しい、それをクニちゃん(橋本さん)にやってほしいと話しか
けてきたんです。

僕は大学の前は高校教師で、「教えない授業」というのを10年間や
っていました。教科書は開かない。生徒たちが自分でやりたいこと・
突っ込みたいことを選び、それに沿って進めてゆく。そんな授業です
。校内での風当たりは大変だったけど、それ以外に、僕にはなんとも
出来なかった。
このフォーラムの第一回目のゲストだった伊勢達郎は、大学時代から
の仲間です。彼がフリースクールをつくったように、僕は学校の中で
、同じようなことをやっていたわけです。

そしてその後は10年間、大学でカウンセラーをやっていた。
じゃあ次の10年はどうしよう。そんな思いとジョナサンの誘いが重
なって、いろいろ考えました。

その頃、多くの大学が臨床心理士の資格を持っているカウンセラーを
揃えはじめていた。僕の大学も同様で、資格を持った人たちが職場に
入ってきた。
その人たちと、どうもウマが合わなくてねえー。
だんだん職場に居づらくなっていたんです。やっていること、やり方
、まるで違うし、納得できないんですね。

──どんな点が?

橋本:いちばん大きかったのは、人をどう見るか、ということかな。
たとえば、ある女の子がカウンセリングに来る。僕はその子の話を聞
いて、一緒に考えたり一緒に感じたり。
その子がいろいろと観て感じてきたことについていったら、「やっぱ
り私は大学やめる」とか「旅に出る」とか、そんな結論に至ったとし
ます。

でも僕がおおざっぱに見るところでは、大学の臨床心理士の方の多く
は、学生が大学の授業にちゃんと出れるように、あるいは大学職員で
ある彼らが「学生のため」に良いと信じるところへ戻そうとする。

落としどころや方向性が決まっていて、そっちへ調整してゆく。つま
り心の底では、大学の要請にこたえようと動いているわけです。
未知でエネルギーにあふれる、「本来の自分が生きるべき物語」にむ
かってともに歩むのではなくて。職場の先輩のある心理士が、「時代
の流れには従わなければなあ....」とつぶやいていたのが、印象に残
っています。
仕方のないことかも。多くの心理士は、より大きな強い組織に属して
生き、お金や安定や地位を得ることを心の中では望んでいるから。


●パーソンセンタード・アプローチ

──橋本さんは、臨床心理士の資格をお持ちではなかった。

橋本:ええ、僕は資格を持っていません。

僕は大学で出会った恩師からカウンセリングを学び、カール・ロジ
ャースの考え方に深く傾倒しました。
彼も、資格制度は要らないと言って いた。その辺にいるおばさんの
方が人の話をよく聴けることは、おうおうに してあると。なぜなら
、人の話を聞くことで相手が成長するということは、資格や技術の問
題ではなく、態度や生き方、存在の仕方の問題だからです。

彼は「共感」「無条件の信頼」「自己一致」。この三つが揃っている
人とのコミュニケーションがあれば、人はその人自身の力でおのずと
成長すると言っています。
人が、その人自身の価値観の中で進めるようになる。

ロジャースは、そこが革命的だった。治療しようなんていう接し方で
は、人はその尊厳を回復しない。
でもそのためには、カウンセラー自身が自分の存在の仕方に意識的で
なければならない。彼の有名な言葉に、「the way to do is to be.」と
いうのがあります。人の前で、どういられるか。そこが問われるわけ
です。

パーソンセンタード・アプローチという言葉は、本当にその人を中心
に、その人の枠組みで共に感じ、その人のプロセスを信頼できるかを
問いかけてくる。
同時に自分自身を失ってはいけない。
自己一致は損なわずに、その人とともあること。そしてより新鮮な生
き方や人生に向かって冒険に乗り出すこと。

しかし大学でのカウンセリングにおいて、このような人間観は期待さ
れていないんだと思った。大学も親もあたらしいカウンセラー達も、
それは望んでいないと。
では、大学を出てみようか。次の10年間をプレイバックシアターと
、それが開いてくれる世界との出会いに投じてみようか、と思ったわ
けです。


●今年のフォーラムでは?

橋本:伊勢達郎がね、「アウトドアや環境教育の世界は、どうも僕ら
がやってきたことと違うみたいなんや」「その人の存在に触れずに、
ファシリテートする。そんなことが行われてるみたいなんや。不思議
やなあ」と、ある時僕に語った。
でも、それを抜きに人がエンカウントする、再統合される、成長する
わけはないですよね。

──西田真哉さんや川嶋直さんの働きもあってか、日本のアウトドア
や環境教育の世界には、ワークショップの概念が広く行き渡っている
ように感じます。しかし、西田さんがこのフォーラムを開きたいと考
えた背景には、今のお話しに通じる想いがあるようにも思います。
今回のフォーラム、二日目の四時間のプラグラムについては、どんな
ことを考えていますか?

橋本:僕たちは心理学の理論だとか、親の価値観とか、尊敬する人と
比べてみるとか、いろんな定規で測った自己イメージを抱えて生きて
いると思います。
けど、そういうのとは違うパースペクティブで、自分を観ることが出
来るといい。

本来の自分が生きるべき大切な物語の骨子を、僕らはあらかじめ自分
の中に持っていると思います。でも、それとは無関係な、組織や社会
向けの物語を演じていると、だんだん心苦しくなる。

まずは自分自身の物語に耳を澄ます必要があるのだけど、その手段に
は、瞑想もあるしプレイバックもあるし、いろいろあります。
どんな方法で四時間を組み立てるかは、まだ考え中です。◆

(聞き手:西村佳哲/2004.7.26)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

●レポートボランティア募集中(8/31〆切)

 3日間のフォーラムを記録・レポートするボランティアを、約10
 名募集しています。(現在9名受付済み)

 ワークショップをよくみてみたい、という方にお薦めです。ワーク
 ショップへの参加ははじめてという方は、一般参加の方が得るもの
 が大きいのではないかと思う。

 作業内容は、各プログラムの撮影とテキストレポートです。
 宿泊費/食費として5,000円をいただきますが、一般参加費は不
 要(交通費自費)。文章力等の簡単な選考をさせていただきます。

 興味のある方、ぜひご連絡ください。

 応募〆切:8月末日
 申込み先:rep_akagi@skunkworks.jp
 


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

インタビュー掲載メール、10日間ぐらいのペースで発行します。
今回の橋本さん号は少し分量が多かったかも。(謝)

兎にも角にも11月にむけて、
今年もよろしくお願いします!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第3回・全国ワークショップフォーラム実行委員会
E-Mail akagi2004@skunkworks.jp
http://www.skunkworks.jp/akagi
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


↑最新のメールマガジンに戻る
(c) 2004 全国教育系ワークショップフォーラム