森川千鶴 インタビュー

2009-03-28(土) 西村 佳哲

ワークショップという場を与えれば、それでいいの?
聞き手:青木将幸

マーキーこと青木将幸です。准ゲストの森川さんを我が家にお招きしてのインタビュー。ちょうど終盤に差しかかったころに、娘の天音が「ちちー、ごはん」といって襖を開けて乱入してきました。
森川さん曰く「これこれ、こういうのが絶妙なのよ(笑)」。大人の対話に入ってくる子どものタイミングの面白さを共に感じました。

岡山・ベネッセでのワークショップより(2005) Photo: Toru Yokota

岡山・ベネッセでのワークショップより(2005) Photo: Toru Yokota


森川 千鶴(もりかわ ちづる)
全国子どもワークショップフォーラム 代表
シンクタンクを経て、リサーチャー/コーディネーターに。多摩ニュータウンで子育てを進める中、さまざまな地域活動にかかわる。近年は「子ども」や「食」をテーマに、ワークショップ的な場づくりを推進。「おつまみ作り隊」の活動が、2005年度「地域に根ざした食育コンクール」で特別賞 審査委員会奨励賞を受賞。全国教育系ワークショップフォーラム事務局長(02~04 於:赤城山)>プロフィール・ページ

 

科学的なアプローチを模索中

──最近、どんなことに興味を持っていますか?

森川千鶴:科学的であることって何だろう? っていうことかな。
これまで子どもとワークショップに関する場づくりをやってきましたが、いずれもけっこう感覚的なんですね。

私自身は、教師ではないし、子どもに関わる専門家でもない。仕事でワークショップに携わった経験や、親としての体験から出た疑問や感じたことをもとに場をつくってきました。
そうやって手探りの感覚でやってゆくなかでも「あ、核心にふれたな」という瞬間もありました。

でも、いわゆる科学的なアプローチがちゃんとされないと、第三者に対して伝えられないんじゃないかという「負い目」のようなのがあるんですよ。そんなところから、最近科学的であることが必要かなと思っています。

──感覚から科学へ、、、ですか。

森川:「今までやってきたことを、もうちょっと違うフェーズから見てみたい」という感じです。

──科学的にアプローチをする、というと具体的には心理学?

森川:そうですね、これまでに学んだこともあるんですが、もうちょっと深めたいですね。先達たちが人間の心理的なしくみをいっぱい研究してきているので、そのへんを勉強したうえで、子どもと関わる大人を見てみたい。

アメリカの宇宙・天文学者カール・セーガンが言った「懐疑する精神」と「驚嘆する感性」の両方を大事にしたい、と思っています。懐疑といっても、単に疑い深く、というのではなくて、よい意味で吟味するようなイメージですね。

──驚嘆は「わぁ、すごーい」って思うことですよね。

森川:そうそう。「やっぱり子どもはすごいよ!」って思う瞬間はこれまでに沢山あったけど、今年度は「子ども力を引き出す」をテーマに活動する中で、子どもに関わることで大人がの方が力を引き出されていることを再発見しました。

先日の新潟でのワークショップ&フォーラムでも、東京からきた子ども達との関わりで、地域のおじさん達がどんどん元気になっていった感じがありました。

参照:新潟で開催されたワークショップ&フォーラム
http://skunkworks.jp/kodomo/2008/archives/cat_forum.html

 
──子どもが大人を引き出せるのは、何故だと思いますか?

森川:うーん、やっぱり集中力かな。本当に好きなことにはまった時、子どもは時間も何も忘れてぐーっと入れちゃいますよね。あのすべてを忘れる集中力が、大人を動かすんじゃないかな。
 

ワークショップという場を与えれば、それでいいのか?

──森川さんが「子どもとの関わり」に関心を寄せていった背景を、もう少し言うと?

森川:自分の子どもが育っている環境を俯瞰した時に、「何かが足りない」って思ったんです。

「学校」と「習い事」と「家」の往復といった具合に、子どもたちはきれいに整理された環境にどんどん放り込まれています。いわゆる地域の中とか、日常での「余白」が失われている。
でも、だからといって、ワークショップという整頓された枠の中に子どもたちを放り込めば、それでいいの? そんなもんじゃないだろう? という疑問がありました。

もっと日常の延長のなかで、何かあるんじゃないかなぁと思って掘り下げたかったんです。

──どんな掘り下げ方をしましたか?

森川:まずは、魅力的な子どもとの関わりの場を作っていそうなTOEC(徳島県のフリースクール)や、きのくに子どもの村学園(和歌山県の自由学校)といった場所を訪ねたり、さまざまな人たちと対話しました。
今回のゲストの松木正さんたちとの大阪での座談会も印象深いです。そのなかで、疑問が確信につながったり発見があったりして、そこで学んだことが、自分にとってはコアになっています。

参照:全国子どもワークショップフォーラム2006に向けた現場探訪
http://skunkworks.jp/kodomo/2006/archives/000051.html

 
そんな経験から、ワークショップ的な場づくりの必要性だけでなく、「ワークショップをすればよし」ではなくて、大事なのは、日々の暮らしであったり、そこに子ども自身にとっての余白があることだったりしたんです。

──子どもとの関わりの探求は、今後も続きますか?

森川:もうちょっと続くでしょうね。八王子で里山留学というキャンプ・ワークショップを始めて2年経ちますが、子ども達がすごく楽しみにしていることもあるし、「これこそやらせてあげたかったことかも」という親たちのニーズも強く感じている。

そこには、野外活動の専門家や多彩なゲスト、たくさんの地域の人や保護者の関わりがあります。
私がやりたいから続ける、というだけじゃなくて、そういう思いにひっぱられて、やっている感じもあります。

──里山留学は、何がそんなに楽しいのでしょう?

森川:子ども達に「何かをしろ」とは誰も言わないんですよ。暑い夏の1週間を自然の多い八王子の小学校で過ごすんですが、毎朝「今日はどういうことをやる?」っていうのを皆で話すところから始まります。

「虫取り!」とか「プール」とか「何かをつくりたい」とか。
ゲストを含め大人も子どもとおなじように「自分はこれをやりたい」と提案する。それらを聞いて、じゃあ自分はどう過ごそうかなというのを考え、選んで、一日の動きを決められるようになっています。

関わる大人は、本気で遊んでいますし、自分の知恵と体力を総動員しなくてはならないことが楽しいようです。大人が率先してやることで、子どもの好奇心に着火します。

子どもの安全・安心を守るのは大人のリスクと考えた時、「見守る」こどほどリスクが高いのかもしれません。コントロールしてしまえば、リスクヘッジはしやすいですからね。

──興味深いです。ありがとうございました。

【おわり】
 

森川さんお薦めの本:
自分のなかに歴史をよむ阿部謹也
ロジャースをめぐって ―臨床を生きる発想と方法村山正治

 


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